<計画の経緯>
賃貸集合住宅を計画しているクライアントの 様々な考えの中から、耐久性・経済性・デザイン性についての新たな方向性として、クライアント自らの提案による「Container Housing」の可能性を検討することになった。
コンテナを用いて建築することについて、クリアーしなければならない最大の条件は 日本の建築基準法である。
それをクリアーしてくれるコンテナの取扱業者(株)シルエット・スパイス (代表:大屋和彦氏)に、関与いただくことによりこのプロジェクトは前に進められることとなった。
同社のこれまでの研鑽・努力により、JIS規格の鋼材と溶接による中国でのコンテナの生産が実現され、日本でのコンプライアンスが可能となった(詳しくは上記HP参照)が、その築き上げられたシステムを用いて、住空間としてのスケールをコンテナの規格から確保しつつ、そのユニットが作る構成のあり方が計画上の次なる課題となった。
<提案主題>
コンテナの規格は、そもそもの目的であるロジスティックスにより出来上がったものだが、そのスケールと住環境におけるスケールギャップを解決する必要がある。また、集合住宅としてのプライバシーとコモンにもとづく構成をどのように計画するかが問われる。
そこで、連結・開放・分節・接続といった事項が、明快でありながら程よい複雑さで構築されることを目指すことにした。
各住戸は基本的に、20feet container(L6,058×W2,438×H2,896) 3ブロックを用いた2層直交メゾネット形式をメインとして、コの字プラン、L字プランをオープンな敷地内通路(「長屋」の成立条件による)に面して配置した。
また、上記スケールギャップを解消するためには、閉じた箱をできるだけ開放して、隣接する外部・その先の内部空間へと連結させていくことが有効であるが、その連続展開のシステムは、コンテナのモジュールによって一定のリズムが生み出されることになった。
様々なスタディによって、この敷地においての構成は一応の集結点に及んだように思う。これもまた、コンテナのモジュールによる限界と合理性に伴うものだと思われる。
<今後の展開>
311大震災によって、建築のあり方が大きく揺さぶられたと思う。
「Container Housing」は 、仮設住宅に応用されるだろうが、仮設的に常設の住まいをつくるという考え方に、今後の住宅はシフトしていけないものだろうか?
さらに、ソーラーパネルを用いて、エネルギー完結型のシステム住宅といった方向性にもいち早く対応しうるものになると思われる。
これらのことを加味して、さらにコンテナを用いた建築形式の展開を考えていきたい。